○ 第1章(続)
  愛の妖精との出会いは唐突に!☆

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.
第
1
章
︵
続
︶
.
・
・
・
﹁
は
ぁ
﹂
.
・
・
・
と
、
美也子は
ため息をついた
。
なん
だか
、
もう
、
と
っ
ても
疲れた
。
何度となく
、
は
ぁ
、
とため息ばかり
が出てしまう
。
﹁
は
ぁ
﹂
.
ゆ
︱
こはあれから少
し行
っ
たところで
、
図
書館に返す本があると
のことで
、
美也子とは
反対の方角へと帰
っ
て
い
っ
た
。
.
彼女と別れ
、
彼女の
姿が見えなくなると
、
途端に美也子は
、
ど
っ
と疲れを感じ
、
ずど
︱
ん
、
と落ち込んだ気分
にな
っ
た
。
.
おかげで一人で歩き
出しても
、
出てくるの
は
、
ため息ばかり
。
﹁
は
ぁ
﹂
﹁
美也子ち
ゃ
ん
、
どう
したの
?
﹂
.
ふいに
・
・
・
.
ふいに
、
美也子の通
学カバンの端の
、
ふた
の下から
、
なにかが
、
ち
ょ
こん
、
と顔をのぞ
かせた
。
.
それは
、
カバンの中
にす
っ
ぽりと納ま
っ
て
しまうぐらいに小さく
て
、
つやつや
、
てかて
かとしていて
、
それで
いて
、
触ると
、
ふに
ゃ
ふに
ゃ
、
とマシ
ュ
マロ
みたいに柔らかそうで
、
明るいピンク色をして
いた
。
.
美也子はちら
っ
と手
に持
っ
たカバンの端へ
と目を向け
、
﹁
だめよ
、
トトプト
、
誰かに見られるじ
ゃ
な
い
﹂
﹁
平気だよ
﹂
と
、
その
、
トトプト
、
と呼ばれた
﹃
なにか
﹄
は答えた
。
.
カバンのふちに
、
ぷ
に
っ
とした手をかけ
、
頭を乗り出している
。
.
その
、
ち
ょ
こんとし
た小さな目で辺りをき
ょ
ろき
ょ
ろ
、
き
ょ
ろき
ょ
ろ
、
と眺めた
。
﹁
だ
っ
て
、
ほら
、
周り
にあるの空き地ば
っ
か
りだよ
。
誰もいないし
﹂
.
確かにそのとおりだ
っ
た
。
.
周りには誰もいない
。
少し前まで
、
ゆ
︱
こと
歩いていた場所とちが
い
、
ここは住宅街の中
ではなか
っ
た
。
.
そのうち住宅が新築
される予定の空き地が
、
一面にどこまでも続い
ている
。
その中の一本
道
。
.
美也子は後ろを振り
返り
、
前を見つめた
。
後ろにも
、
前にも
、
誰
もいない
。
ま
っ
すぐに
ず
っ
と続いている道を
歩いているのは自分一
人
。
﹁
うん
、
まあね
﹂
と美
也子は言
っ
た
。
﹁
でも
ね
、
トトプト
、
気をつ
けてね
﹂
﹁
うん
、
わか
っ
てる
﹂
.
トトプトは
、
えいし
ょ
、
っ
と小さなぷにぷ
にの手に力を込めて
、
カバンのふちから身を
乗り出した
。
.
こぶのようにな
っ
て
いる体の背中の部分を
、
ぷるぷると揺らし
、
ぽ
に
っ
としたお顔を
、
ふ
るふると揺らす
。
.
そのまま
、
カバンの
ふちから
、
ふわ
っ
と飛
び上が
っ
た
。
.
美也子のすぐ目の前
の空中に
、
手足を伸ば
して
、
ふわふわ
、
ふわ
ふわ
、
と浮かんだ
。
﹁
えへへ
﹂
﹁
あ
、
こら
、
トトプ
ト
!
﹂
.
美也子はあわてて
、
辺りをき
ょ
ろき
ょ
ろ
。
﹁
ち
ょ
、
ち
ょ
、
ち
ょ
っ
と
、
いくらなんでもだ
めよ
。
遠くからでも
、
誰かに見られたらどう
するのよ
ぉ
﹂
﹁
だいじ
ょ
うぶ
、
だい
じ
ょ
うぶ
﹂
.
トトプトは後ろ向き
に
、
くる
っ
と大きく一
回転
、
空中にふわ
っ
と
大きな円を描いた
。
﹁
ぼくたち
、
ぷりんて
ぃ
ん
、
はね
、
もし人間
に見られても
、
見られ
たくないときには
、
い
くらでも姿を見えなく
することが出来るんだ
から
。
言
っ
たろ
?
﹂
﹁
あ
っ
・
・
・
﹂
.
そうだ
っ
た
。
そうい
えば
、
はじめて会
っ
た
ときに
、
そんなことを
言
っ
てた
っ
け
。
.
でも
・
・
・
.
それでも
、
美也子は
なんとなく落ち着かず
、
何回か辺りを見回さず
にはいられなか
っ
た
。
﹁
えへへ
﹂
.
トトプトはそんなこ
とにはお構いなしに
、
右に行
っ
たり
、
左に行
っ
たり
、
くる
っ
と前回
りに回
っ
たり
、
くるる
、
くるる
、
っ
と後向きに
回
っ
たり
、
空中にいく
つも
、
いくつも
、
大き
な円を描いた
。
.
その向こうを一匹の
大きな蝶
々
が
、
ぱたぱ
た
、
さ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
っ
と横
切
っ
ていく
。
.
やれやれ
、
と美也子
は思
っ
た
。
.
トトプトは春の陽射
しを全身にあびながら
、
本当に楽しそう
。
.
にこにこ
、
にこにこ
、
と笑いながら
、
さ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
︱
、
くるくる
、
くるくる
、
くるるん
、
くるり
、
と空中を飛び
回
っ
ている
。
.
一日中
、
カバンの中
にいたんだから
、
仕方
ないか
・
・
・
.
その姿を見ていると
、
美也子はもうそれ以上
、
なにも言う気にはなれ
なか
っ
た
。
.
体の前で通学カバン
を両手で持ち直すと
、
ふ
︱
っ
と軽い吐息をも
らした
。
.
トトプトは本当に楽
しそう
。
.
やれやれ
・
・
・
.
それにしても
、
と美
也子はち
ょ
っ
とだけ首
を左に傾けながら
、
思
っ
た
。
.
あ
︱
、
それにしても
、
どうしてこういうこと
にな
っ
ち
ゃ
っ
たんだろ
う
?
.
・
・
・
.
三週間前
︱
︱
.
その日の夜
、
美也子
は自宅二階にある自分
の部屋で
、
ラブレタ
︱
を書いていた
。
.
文房具屋さんで買
っ
てきた
、
スミレの花の
透かしの入
っ
た薄い黄
色の便箋
。
.
勉強机を前に椅子に
座り
、
そこに一文字一
文字
、
ペンで言葉をつ
づ
っ
ていく
。
相手はあ
こがれのサ
ッ
カ
︱
部の
キ
ャ
プテン
。
.
と
、
い
っ
ても
、
じつ
はそんなに大まじめな
わけでもなか
っ
た
。
ち
ょ
っ
とした遊び心
。
.
サ
ッ
カ
︱
部のキ
ャ
プ
テンはたしかにハンサ
ムで
、
女の子たちの人
気も高く
、
美也子もそ
れなりに
、
いいな
、
か
っ
こいいな
、
とは思
っ
ていた
。
思
っ
ていたけ
ど
、
かるく思
っ
ていた
だけ
。
.
ただ単になんとなく
、
この日の昼間
、
少女マ
ンガを読んでいたら
、
あこがれの先輩にラブ
レタ
︱
を書くシ
︱
ンが
あ
っ
て
、
なんとなく
、
なんとなく
、
自分も主
人公の女生徒のように
、
﹃
ラブレタ
︱
﹄
、
なる
ものを書いてみたくな
っ
ただけのことだ
っ
た
。
.
取り立てて
、
適当な
相手もいないので
、
と
りあえず話をしたこと
もないサ
ッ
カ
︱
部のキ
ャ
プテンが相手とな
っ
た
。
.
もちろん
、
書き終え
たら
、
机の引き出しに
入れて
、
なんとなく
﹃
そんな気分
﹄
にな
っ
て
、
ふ
ぅ
、
と一人
、
窓
辺の揺れるカ
︱
テンを
眺めながら
、
甘いため
息をつければ
、
それで
よか
っ
た
。
.
よか
っ
たはずなのに
・
・
・
はずなのに
、
な
んだか
、
凝
っ
た言葉を
書きつづ
っ
ているうち
に
、
意味もなく切ない
気持ちにな
っ
ていた
。
.
・
・
・
﹃
好きです
﹄
﹃
愛してます
﹄
﹃
前から見てました
﹄
﹃
あなたを思うと夜も
眠れません
﹄
﹃
つきあ
っ
てください
﹄
・
・
・
.
ふ
ぅ
、
と美也子はペ
ンをとめて
、
ため息を
ついた
。
.
もしこれが本当のラ
ブレタ
︱
だ
っ
たらな
︱
、
という気持ちにな
っ
た
。
本当のラブレタ
︱
だ
っ
たら
、
も
っ
と
、
も
っ
と
すてきなのに
・
・
・
.
美也子は頬杖をつき
、
右手の窓辺のカ
︱
テン
を見つめた
。
.
開いた窓
、
表から吹
いてくる風に
、
カ
︱
テ
ンはさらさら
、
さらさ
らと揺れている
。
.
あ
︱
あ
、
私もか
っ
こ
いい彼氏がほしいな
︱
。
.
美也子はぼんやりと
思
っ
た
。
.
そしたら
、
毎日
、
駅
前のケ
︱
キ屋さんに寄
っ
て
、
二人で楽しくお
し
ゃ
べりするのに
・
・
・
.
カ
︱
テンはさらさら
、
さらさらと揺れている
。
.
美也子は自分でも気
がつかないうちに
、
ぽつり
、
とつぶやいて
いた
。
﹁
あ
︱
あ
、
.
.
私も愛がほしい
﹂
.
・
・
・
.
・
・
・
・
・
・
.
と
、
.
その瞬間
。
.
ざざ
っ
と
、
ふいに窓
の外からものすごい強
風が吹き込んできた
。
.
え
っ
?
.
カ
︱
テンがぶわ
っ
と
吹き上がり
、
ばさばさ
、
ばさばさ
、
と揺れる
。
.
風は美也子の顔にも
吹きつけ
、
きれいにす
いていた髪も
、
ばばば
、
ばさ
っ
と吹き上が
っ
た
。
﹁
き
ゃ
っ
﹂
.
美也子は思わず頬杖
をはずし
、
目を閉じて
いた
。
.
すぐに風の気配はな
くなる
。
.
彼女が恐る恐る目を
開くと
、
風はもうもと
の通り
、
静かなものに
戻
っ
ていた
。
.
カ
︱
テンがさらさら
、
さらさらと揺れている
。
.
美也子は
、
ふ
︱
っ
と
息をついた
。
ごく
っ
と
唾を飲み込む
。
.
い
、
いまの
・
・
・
い
まの
、
な
、
なんだ
っ
た
んだろう
?
.
いまのす
ごい風
・
・
・
?
.
ふ
︱
︱
っ
、
ともう一
度
、
息をついた
。
心臓
はどきどき
、
どきどき
、
としていたけど
、
よう
やく気持ちが少しだけ
落ち着いた気がする
。
.
なんだかち
ょ
っ
とだ
けおかしくな
っ
て
、
く
す
っ
と笑
っ
た
。
.
も
︱
、
へんなの
。
.
くすくす
、
くすくす
、
と笑
っ
た
。
.
やれやれ
・
・
・
.
正面に
・
・
・
机の上
の便箋の方へと向き直
っ
た
。
.
と
、
そこには
・
・
・
.
え
っ
?
.
そこには
、
なんだか
、
つやつや
、
てかてか
、
とした
、
でも
、
どこか
、
ぷにぷにとした
、
見な
れない
、
﹃
なにか
﹄
がいた
。
.
その小さな
、
﹃
なに
か
﹄
は
、
ピンク色をし
ていて
、
便箋の上で
、
すく
っ
と
、
短い後ろ足
で立ち上がると
、
どこ
か
、
おずおず
、
おずお
ずとした様子で美也子
を見上げた
。
.
その小さな二つのお
目
々
と美也子の目が
・
・
・
目と目がま
っ
すぐ
に合う
。
﹁
あ
、
あの
・
・
・
愛を
お届けにきました
﹂